駅周辺などに放置されている自転車たち。撤去する自治体にとっては悩みの種だが、そんな自転車を有効活用しようという取り組みが全国で広がる。国内で撤去される自転車は年間100万台超あり、うち20万台以上がさまざまな形でリサイクルされている。東京都港区では、撤去された自転車を「職人」の技でよみがえらせた放置自転車のリサイクル販売が、ひそかな人気となっている。(北沢拓也)
11月中旬の日曜朝。港区元麻布の閑静な住宅街の一角にある港区シルバー人材センターの作業所に、60人が列を作っていた。お目当ては、この作業所でリサイクルされた自転車だ。
「分からないことがあれば何でも聞いて下さい」「返品、交換は不可です。ご注意ください!」。ぴかぴかに磨き上げられた自転車40台が並ぶ会場に、冨田誠二さん(80)の張りのある声が響き渡った。自転車を見比べて即決する人もいれば、サドルにまたがったり車体を持ち上げたりして考え込む人も。約1時間の「販売会」は慌ただしく終わった。
港区シルバー人材センターの主催で2001年10月から続いている放置自転車の販売会。販売されているのは、港区内で撤去されたものだ。区は、駅周辺などに「放置禁止区域」を設定しており、一定時間止めたままの自転車を撤去し、区内の一時保管所に運ぶ。撤去・保管の告示後30日経っても持ち主が現れない場合、区が処分できる。
冨田さんは同センターの「自転車リサイクル事業」のリーダー。元々は車の整備士で退職を控えた59歳の時、同センターでこの事業の計画を知らされ、「自分の技術を生かせる」と定年前に転身した。
リサイクルの流れはこうだ。
冨田さんらが保管期間の過ぎ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル